近年、歯や口といった口腔内の健康が、認知症や糖尿病、脳や心臓の全身疾患と深い関りがあることが判明してきました。

 

歯やお口の健康は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、誤嚥性肺炎、糖尿病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの全身疾患と深くかかわっており、

 

正しい歯のケア次第でこれだけの病気が予防・改善でき、個人の生涯にかかる医療費が1000万円以上削減できる事も解ってきました。

 

防衛費をGDP比2%の11兆円規模に増額するにあたり、国論を二分にする我が国ですが、医療費は年間46兆円も支出されており、高齢化に伴い、20年前と比べると45%も上昇しています。

 

今後ますます高齢化社会が進む我が国において、全ての国民が等しく医療の恩恵を受けれる「国民皆保険制度」を維持していくためには医療費削減は必須です。

 

医療費の削減のためには歯と口の疾病予防が未来の日本の発展を左右する大きなカギとなるでしょうし、日本人の健康寿命の延伸に繋がります。

 

私は予防医療の観点からも、ご自身による日々のメンテナンスと、歯科医による歯科検診、定期的な歯石除去、歯垢除去、歯面清掃といったクリーニングが大変重要だと思っています。

 

2025年には認知症の患者数が65歳以上の5人に1人、埼玉県の人口に匹敵する730万人と試算されている今、町田市保健所からも口腔内の健康の重要性を広く市民に啓発し、市民の健康寿命の延伸を目指して議会質問に取り上げました。

 

 

2023.12一般質問(歯科検診について)

 

【壇上質問 厳太郎】

通告に基づき、項目番号2「クリーニング付き歯科検診を実施すべきと考えるが。」について一般質問します。

 

激変する世界情勢を受けて政府は国の防衛費をGDP比2%程度の11兆円規模に増額することをすることを決め、大きな争点となりました。

 

一方、病気やけがの治療のため全国の医療機関に支払われた昨年度の医療費は概算で46兆円にものぼり、二年連続で過去最高金額を更新し、20年前と比べると医療費は45%も上昇しました。

 

高齢化が進む日本では毎年医療費が増加を続けており、自治体の財政を圧迫しています。

 

健康寿命の延伸や医療費削減の観点から、国では予防歯科が注目されています。

 

近年、口腔の健康が、糖尿病、心臓病、骨粗しょう症、肥満、脳梗塞、認知症、誤嚥性肺炎、リウマチ、早産や低体重児出産などの全身の健康、健康寿命の延伸に繋がるという様々なエビデンスが明らかになってきています。

 

国の経済政策の基本方針である「骨太の方針2023」においても生涯を通じた歯科検診、所謂「国民皆歯科検診」に向けた取り組みの推進が明記されました。

 

健康で長く社会で活躍できる高齢者が増えていくためには歯と口の疾病予防が未来の日本の発展を左右する大きなカギとなると思います。

 

私は町田市議会において平成22年の定例会で「成人歯科検診について」質問し、受診率の向上を求めてきましたし、平成29年の6月定例会では歯科検診を「ふるさと納税の返礼品としてはどうか」との視点で質問しました。

 

町田市では当時、30歳から70歳を対象に成人歯科検診をしていましたが、現在では2歳児歯科健康診査、18歳から70歳までを歯科口腔健康診査、71歳以上は高齢者歯科口腔機能健診と対象を拡大してきていってくださっています。

 

しかしながら、町田市の歯科健康診査の受診率は低いと伺いました。

受診率向上のため、以前杉並区で実施していたクリーニング付き成人歯科検診の導入は考えられないか質問します。

 

(1)町田市の歯科検診の現状は?

(2)受診率の向上を図り、医療費削減のためクリーニング付き歯科検診を実施していくことが必要と考えるが?

 

【答弁 河合保健所長】

項目2の「クリーニング付き歯科健診を実施すべきと考えるが」について、お答えいたします。

まず、(1)の「町田市の歯科健診の現状は?」についてでございますが、

市では、定期的な受診で必要な予防処置や指導を受けることが出来る、かかりつけ歯科医を持つことを推奨しており、そのきっかけづくりの一環として、歯科口腔健康診査を実施しております。

歯科口腔健康診査は、18歳から70歳の方を対象に、町田市歯科医師会のご協力のもと、市内113か所の歯科医院で実施しており、妊婦は無料で受診することができます。

歯科口腔健康診査の受診者数は、2020年度が1,224人、2021年度が1,083人、2022年度が1,327人でした。

また、71歳以上の方については、噛む能力や飲み込む能力の検査も行える「高齢者歯科口腔機能健診」を市内59か所の歯科医院で実施しており、受診者数は、2020年度が354人、2021年度が511人、2022年度が525人でした。

次に、(2)の「受診率の向上を図り、医療費削減のためクリーニング付き歯科健診を実施していくことが必要と考えるが?」についてでございますが、

歯科健診は、歯と口腔の健康状態の検査と、関連する生活習慣や全身疾患の状況を踏まえた保健指導を行うことで、生涯を通じて歯と口腔の健康を保つことを目的に実施しております。

歯科口腔健康診査の実施にあたっては、国のマニュアルを参考としておりますが、歯科健診時にクリーニングを行うことに関しては、受診率向上の手段として言及されておらず、その効果は明らかとなっておりません。

市では多くの方に歯科健診を受診していただくため、様々な機会をとらえて周知を行っております。これまでは特に高齢者への周知に力を入れてきましたが、今後は若年層に対してもイベントや町田商工会議所を通じて普及啓発を行っていくことを予定しております。

 

【再質問①厳太郎】

クリーニングを行うことに関して、受診率向上の手段として効果が不明である旨との答弁でした。

 

令和2年の厚生労働省の調査によれば、日々個人でブラッシングなどの手入れをしていても、84%の方々の歯に歯石が付着していたそうです。

 

私は予防歯科の観点から歯科検診と歯科医による定期的な歯石除去、歯垢除去、歯面清掃といったクリーニングが大変重要だと思っています。

 

以前、杉並区ではクリーニング付き成人歯科検診を行っていましたし、岡山県美咲町ではクリーニング付き妊産婦歯科健康診査が行われています。

 

口腔内の健康が誤嚥性肺炎に繋がることは少し知られてきていますが、最近では認知症や糖尿病との関係が専門家の中で注目されてきています。

 

これまでに20万人以上の認知症患者をみてきた認知症専門医が「脳の老化を止めたければ歯を守りなさい」と警鐘を鳴らしています。

 

厚生労働省は再来年の2025年には65歳以上の5人に1人、全国で730万人が認知症になると試算しています。

これは埼玉県の人口に匹敵するほどの人数です。

 

認知症になると、日常生活のほとんどに介助や見守りが必要になり、そのうち徘徊や攻撃行動など、いつも誰かが付いていなくてはならなくなり、家族などまわりの負担は想像以上に大きくなります。

私も94歳の認知症の祖母と2人で生活していたのでそのことはよくわかります。

 

また、その介護をめぐり国や自治体だけでなく、個人的にも大きな経済負担が必要になります。

 

近年では将来なりたくない病気としてガンや肺炎を押しのけて、認知症が1位になっているほどです。

 

町田市の認知症支援や介護予防・フレイル予防は大変定評が高く、他自治体や他国から多くの関係者が視察研究に来るほどですが、できることなら認知症を予防し、遠ざけたいと思うことは当然と言えます。

 

70歳以上の高齢者を対象にした東北大大学院の調査では、脳が健康な高齢者は平均14.9本の歯が残っており、認知症の疑いがある高齢者は平均9.4本しか残っていなかったそうです。

 

名古屋大大学院の調査では、認知症の高齢者は健康な高齢者に比べ、残っている歯の本数は3分の1しかなく、早くに歯を失い、治療せずに放置しておくとアルツハイマー型認知症の発症リスクが健康な人の3倍にもなると結論づけました。

 

町田市では全ての市民が住み慣れたこのまちで、健康で、安心して、希望をもって生活できるよう、生活習慣の改善や健康づくりの推進、安心できる地域医療の充実などを目指し、「まちだ健康づくり推進プラン(第5次町田市保健医療計画)2018~2023」が策定されています。

 

この中で「歯と口の健康づくり」の施策に認知症が触れられていないのですが、町田市は認知症と口腔保健の関りについていかがお考えですか?

 

 

【答弁①河合保健所長】

歯と口の健康と全身疾患の関連については様々な報告があり、認知症についても全身疾患の1つとして認識しています。今後も正しい情報を市民へ周知できるよう努めてまいります。

 

【再質問②厳太郎】

認知症と口腔保健の関りについての町田市のご認識は解りました。

人間の表面積の10分の1以下しかない口が脳の中では運動野と感覚野の3分の1を占めています。

 

歯をたくさん残し、歯周病を予防することで、全身疾患のリスクが低減するため、正しい歯のケアをすると生涯医療費が大幅に安くなることが解っています。

 

日本歯科医師協会が全国の40歳以上を対象に行った調査では、歯のケア次第で生涯にかかる医療費が1000万円以上安くなるとのことです。

 

それは、歯やお口の健康がアルツハイマー型認知症、血管性認知症、誤嚥性肺炎、糖尿病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの全身疾患と深くかかわっており、正しい歯のケアをすることによりこれだけの病気が予防・改善できるからです。

 

また高齢者が寝たきりになるきっかけとして多いのが転倒による骨折です。

 

スウェーデンの調査では、中等度以上の歯周病があると、奥歯を噛みしめることで踏ん張りがきかないことから、大腿骨や腕の骨折リスクが2.1倍になるとの結果が出ています。

 

歯をケアすることで、脳が活性化し、認知症や全身疾患を予防し、健康寿命が延び、生涯医療費が大幅に安くでき、寝たきりにならず、いくつになっても好きなものが食べられ、孤独に陥ることが避けられます。

 

市民が定期的に歯科に通い、定期的なクリーニングを実施することにより、市民の健康寿命を延伸させ、医療費を大幅に削減していくことが今後必要となってくると思いますが、町田市はいかがお考えですか?

 

【答弁②河合保健所長】

WHOの研究よると口腔疾患が高齢者の健康寿命を喪失させる原因の一つとして報告されています。

町田市ではかかりつけ歯科医を持つことを推奨しており、かかりつけ歯科医とは、むし歯や歯周病などの歯や口の病気の治療や予防、歯の磨き方や食生活のアドバイスなど日常生活をサポートする等の役割をもつため、市ではそのような周知を含めてかかりつけ歯科医をもつことに対しての普及啓発を行っています。

 

【再質問③厳太郎】

町田市では第5次町田市保健医療計画を策定し、すべての市民が住み慣れたこのまちで、健康で、安心して、そして希望をもって生活できるよう、生活習慣の改善や健康づくりの推進、安心できる地域医療の充実などに取り組んでいます。

 

園児・児童・生徒の虫歯率は、保健所や関係機関のご尽力で1984年では83~92%と高確率でしたが、近年は26%~39%となっており、子どもの虫歯は大きく減少しています。

 

一方、町田市健康歯科検診の受診率は0.4%と大変低いとのことです。(人口規模からしますとかなり少ない印象を持ちました。)

しかも受診した市民ののうち、進行した歯周病にかかっている人の割合が55.3%もいるとのことです。

 

町田市民の「保健医療意識調査」の結果、歯科保健に関する知識の普及という点において、口腔内のケアが十分に行われないと悪化させる病気について知っている割合は、歯周病は97.8%ですが、誤嚥性肺炎は28.9%、糖尿病は25.4%にとどまっています。

 

歯やお口の健康が認知症、血管性認知症、誤嚥性肺炎、糖尿病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの全身疾患と深くかかわっており、クリーニングなど正しい歯のケアをすることによりこれだけの多くの病気が予防・改善でき、市民の健康寿命を延伸させられることを市民に広く普及啓発ししていくべきと考えますが、どのように普及啓発していきますか?

 

【答弁③河合保健所長】

市のホームページや糖尿病予防講習会等において、歯周病と全身との関係や、歯科健診による歯周疾患等の予防と早期発見について周知を行っています。

また、高齢者を対象とした歯と口の健康講座において、口の機能低下や口の中の細菌と誤嚥性肺炎との関連について周知しています。

今後も引き続き、市民に対して、歯の健康に関する情報提供を行い、歯科健診を受けることによる早期発見、治療の大切さについて普及啓発を行っていきます。

 

【再質問④厳太郎】

私は口腔内を健康に保ち健康寿命の延伸のためには予防の観点から歯科検診と歯科医による定期的なクリーニングが大変重要だと思っています。

 

歯科のクリーニングについて現時点で補助を出していくことが難しければ、クリーニングなど正しい歯のケアをすることによりこれだけの多くの病気が予防・改善でき、市民の健康寿命を延伸させられることを啓発し、市民に広くクリーニングについて積極的に勧奨していくことは考えられませんか?

 

【答弁④河合保健所長】

口腔内を健康に保つためには、自らが歯垢等の付着状態や歯肉の炎症状態を観察し、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス等を使用して歯及び歯肉を自己管理する「セルフケア」とかかりつけ歯科医で行う「プロフェッショナルケア」の両輪で取り組むことが必要と考えています。正しいセルフケアを行うためにも、かかりつけ歯科医が必要であると考えていますので、引き続き、かかりつけ歯科医をもっていただくよう周知を行ってまいります。

 

【再質問⑤厳太郎】

「まちだ健康づくり推進プラン(第5次町田市保健医療計画)2018~2023」は今年が最終年度になると思います。

 

策定した2018年と比べ歯とお口の健康と認知症や様々な全身疾患との関係が明らかになってきた今、次期計画にはどのようなことを盛り込んでいきますか?

 

【答弁⑤河合保健所長】

次期計画については、第5次町田市保健医療計画の課題等を踏まえ、市民が、歯を喪失する大きな要因となっているむし歯(う蝕)や歯周病を予防することができるよう、あらゆるライフステージの市民に対し、自身の歯と口の状況について知る機会や歯と口の健康づくりに関する情報等の普及啓発を継続して行うことを検討中でございます。

 

【再質問⑥厳太郎】

歯やお口の健康状況は誤嚥性肺炎や糖尿病だけではなく、脳卒中、心筋梗塞、認知症といった全身疾患と深い関係があることから、国は今後5年間をかけて全身疾患とお口の繋がりの更なるエビデンスを積み上げると共に、国民皆歯科検診を掲げ、簡易な歯周病検査キットを広く国民に提供し、簡単に歯周病を判定できるようにすることを検討しているようです。

 

いわば検便や検尿のようなものらしいです。

 

歯周病の罹患率は15~24歳で20%、25~34歳で30%、35~44歳で40%、45~54歳で50%、55歳以上は55~60%となっていますので、

 

国民の半数近くが歯周病にかかっていることが予想されることから、慌ててクリーニングに通う方が続出するのではないか、と思っています。

これら国の動向について町田市はいかがお考えですか?

 

【答弁⑥河合保健所長】

国は、生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診について、あらゆる年代が健診を受けやすい環境を整えることが重要としておりますが、市では、すでに18歳以上を対象に健診を受けられる体制をとっています。

引き続き、歯科健診をきっかけづくりの一環として、かかりつけ歯科での定期的な受診を促していきます。

 

【再質問⑦厳太郎】

歯科検診とクリーニングをセットですれば初診料がかからず、受診する側も500円程メリットがあるのではないか?

 

【答弁⑦河合保健所長】

繰り返しとなりますが、受診率向上の手段としてクリーニングの効果は明らかとなっていないため、歯科健診については、かかりつけ歯科医と合わせて普及啓発を継続し、多くの方に受診していただけるよう努めてまいります。

 

 

【再質問⑧厳太郎】

歯科医師の方からお聞きしたのですが、町田市の歯科健康診査では提出する書類が非常に使い勝手が悪いそうです。

 

町田市歯科医師会の方々と共に調整し使い勝手が良い書式に変更していくことは考えられませんか?

 

【答弁⑧河合保健所長】

書類について、各医院から月ごとに件数の報告と健診票を送っていただいております。

健診票については、(先ほど答弁した国の)マニュアルを参考にしておりますが、歯科医師会と意見交換を行い、必要時には変更する等、対応していきます。

 

【厳太郎】

大半の市民は「かかりつけ歯科医がいる」と感じていても、歯科医は歯が痛くなった時に治療のため通うところと認識しており、クリーニングなどで定期的に予防のため通うところとの意識が希薄なのではないかと思います。

 

また、町田市民の「保健医療意識調査」の結果でも明らかになっていますが、口腔内の健康が全身疾患を予防することの知識も広く普及しているとは言い難いです。

 

町田市民の健康寿命の延伸と医療費削減のためにも、多くの市民が歯科健康診査に足が向かうような啓発活動と、予防的見地から口腔内の健康が全身疾患を予防・改善できることについても広く市民にお知らせいただきたくことをお願いしてこの項目を終了します。

 

ありがとうございました。